伊坂幸太郎

重力ピエロ
新潮文庫
定価 本体629円(税別)

兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは−−。(裏表紙より)

大きな話の中から1コマ1コマを取り出していくことで、流れるように話が進んでいき、テンポ良く読むことができました。
重苦しい話になってしまいそうなテーマを取り扱っているにも関わらず、作品に重さは一切なく、軽さすら感じました。
『オーデュボンの祈り』の主人公、伊藤や『ラッシュライフ』に登場する泥棒黒澤さんが登場したりしているので、読み返してみるのも楽しいかもしれません。

「両方とも英語にすると、『スプリング』ですね」
P27 L8

* * *

ラッシュライフ
新潮ミステリークラブ
定価 本体1700円(税別)

リストラされた中年男性、礼儀正しい泥棒、愛人と共謀して愛人の妻を殺そうとする女、“神様”の正体を確かめるた めに教祖を解体しようとする信者、何事も金で解決できることを信じて疑わない男と彼に翻弄される女。そして動きだすバラバラ死体の謎。複数の物語とそこに 錯綜する幾人もの人生は、縦糸と横糸が織り合わさるように、やがて一枚の絵を描く。(活字倶楽部より)

流れるような文章は言うまでもありませんが、今回は織り重なっていくような構成に注目して読んでいただきたいです。
読了してすぐは気がつかなかったのですが、ぱらぱらとピックアップしながら読み返してみて、物凄い伏線がはってあることに気がついてため息が出てしまいました。ここまでくると何も言えません。
今回のキャラクタも悪い人たちが登場しましたが、個人的には泥棒の黒澤さんが好きですね。自分の中でだけであってもきちんとしたポリシーを感じると悪人であっても格好良いなと思ってしまいます。

ラッシュライフ――豊潤な人生。
P266 下段 L14

* * *

陽気なギャングが地球を回す
NON NOVELS
定価 本体838円+税

成瀬は嘘を見抜く名人、さらに天才スリ&演説の達人、紅一点は精確な体内時計の持ち主―― 彼らは百発百中の銀行強盗だった……はずが、その日の仕事に思わぬ誤算が。逃走中に、同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯と遭遇。 「売上」ごと車を横取りされたのだ。 奪還に動くや、仲間の息子は虐め事件に巻き込まれ、死体は出現、札付きのワルまで登場して、トラブルは連鎖した!最後に笑うのはどっちだ!? ハイテンポな知恵比べが不況気分を吹っ飛ばす、都会派ギャング・サスペンス!(裏表紙より)

今回も主人公たちは銀行強盗という悪者のはずなんですけどね。 悪いことをやっているように思えないのは、罪悪感が見られないせいでしょうか。あと、きちんとしたポリシィがあるからかもしれません。
キャラクタも嘘発見器に演説の人、スリの人、体内時計の人というメンバたちがきっちり組み合っているあたりが本当にうまいと思います。 タダシくんの使い方も効果的だと思いますし。やっぱり伊坂作品はセリフの使い方が本当に上手です。
今、本好きを名乗るのなら、ぜひ読んでおくべき作家の一人だと本気で思います。

「ゼロで割ると世界はおかしくなっちゃうんだよね」
P23 上段 L12〜

* * *

オーデュボンの祈り
新潮文庫
定価 本体629円(税別)

コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気が付くと見知らぬ島にいた。 江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。 嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。 無惨にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止できなかったのか?(裏表紙より)

本当に伊坂作品は面白いです。完徹して読んでしまいましたよ。
テンポの良い会話、流れるように進むストーリィ、個性の強いキャラクタ…等々、凄いの一言に尽きますね。
カカシが喋っているということに、初めのうちはビックリしましたが、読み進めていくうちに、一人のキャラクタとして認めていました。
パラパラ読み返してみると、しっかりと何重にも伏線がはってあって、驚きました。

「未来は神様のレシピで決まる」
P38 L6

* * *

グラスホッパー
角川書店
定価 本体1500円(税別)

「人は誰でも、死にたがっている」
「世界は絶望と悲惨に塗れている」
でも僕は戦おうと思うんだ。
君との記憶だけを武器にして−−(帯より)

三人を主人公にして、少しずつテンポの良い物語が進んでいくのに、ついついハマってしまいました。
鈴木さんと奥さんの回想での会話がたまりません。何か良いですよね、こんな会話。
過去と決別しようとする鯨や自由であろうとする蝉も良いと思うのですが、 やっぱり奥さんとの思い出と会話しながら戦おうとする鈴木さんが素敵です。
やっぱり伊坂さんは、まず会話ありきでしょう。

「世界ではじめて、PKをやったのがクマのプーさんでさ。で、その時、キーパーだったのがトラのやつだよ。 名前は忘れたけど、あの跳びはねて騒がしいやつ」
P129 L6〜

* * *

アヒルと鴨のコインロッカー
東京創元社 ミステリ・フロンティア
定価 本体1500円+税

「一緒に本屋を襲わないか」
引っ越してきた途端、悪魔めいた長身の美青年から強盗計画を持ち掛けられた僕。標的は…たった一冊の広辞苑!?

めちゃくちゃ面白かったです。
琴美ちゃんを主人公にした過去の話と椎名君を主人公にした現在の話が交互に進められ、少しずつ話が明らかになっていくのにのせられて、 気がついたら、あっさり一日で読了してしまっていたり。
軽快に会話が繰り広げられていくのですが、読後にどうしようもないほどのもの悲しさを感じてしまいます。
コインロッカーの中のボブ・ディランがドルジに救いを与えていますように。

「神様を閉じ込めに行かないか?」
P319 L19

BACK



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送